英語という言語そのものはコミュニケーションを行うための共通のツール

Ryuji H.さん (製造・サービス業)

神戸市生まれ。甲南大学経営学部卒業。その後、カリフォルニア州のチャップマン大学に編入し、情報システム(Computer Information Systems)を専攻。卒業後の約1年間、現地の監査法人でのインターンシップや日系住宅機器メーカー勤務を経て、日本へ帰国。その後、外資系ITコンサルティング会社にて基幹システム構築に関わる仕事に約7年間従事。現在はシンガポールに拠点を移し、石油・ガス関連の製造・サービス業に携わっている。

中学時代は、英語が最も苦手な教科でした。高校に入ってからは、家族での恒例行事であった毎夏の海外旅行や、弟の国際学校入学をきっかけに、自然と英語に触れる機会が増え、いつの間にか英語に対する抵抗はなくなっていったように思います。その後、大学3年目の夏、1ヶ月半のカリフォルニア短期留学を経て、なんとなくですが海外に行くことで自分の将来の可能性がより広がるのではと思い始めたように記憶しています。帰国後、本格的な留学を目指して必死にTOEFLを勉強し、甲南大学卒業後にカリフォルニア州のチャップマン大学という小規模な私立大学に編入する事が出来ました。

 

留学中には、今でも交流の深い様々な国籍の友人が出来た事が一番の財産です。語学学校にも行かず直接大学へ編入し、さらに小規模性の授業でグループでのプレゼンなど「英語を話す」事を求められるアサイメントが多く、壁にぶち当たり続けた1年目でしたが、そんな際に同じような環境にいた留学生の存在が励ましになりました。一方では、授業前の早朝にサーフィンに出かけ、授業後には友人と食事に行き、休暇中はラスベガスで遊んだりと、今思えば人生で最も贅沢な時間を過ごした時期でした。この留学生活が人生における大きな転機になり、英語力の向上のみならず、「石橋を叩いて渡る」性格から何事に対しても「とりあえずやってみよう」、「やれば出来るのでは」と思えるような積極性や自信が身についたように思います。

 

チャップマン大学卒業後、監査法人でのインターンシップや日系住宅機器メーカーでの勤務を経て、ボストンのキャリアフォーラムにて内定の決まった外資系ITコンサルティング企業に就職するため、約5年の渡米生活を終え、東京に引っ越しました。その後、約7年間ITコンサルタントとしてタフな社会人生活を過ごすことになりましたが、これが2回目の転機といっても過言ではないほど、大切な経験が出来た時期であることは間違いありません。「Up or Out」、つまり「昇進するか辞職するか」という文化があると言われるほどシビアな環境でしたが、IT分野における専門的な知識・技術の習得以上に、「物事の本質をとらえる」「物事を俯瞰的にみる」「自らが考え動く」といった、コンサルタントとして必要な資質を磨くために鍛えられた環境だったと思います。また、海外に販売・生産拠点を設ける日系企業のグローバル化に伴い、共通の基幹システムを構築するグローバルプロジェクトを経験する事が出来ました。このプロジェクトでは複数の海外拠点との調整役を務め、海外出張や、メール、電話会議、テレビ会議などで英語を使う機会も多く、「物事を正しく伝える」「相手と議論する・納得させる」ためのコミュニケーションに苦労した記憶があります。この経験を通じて、英語という言語そのものはコミュニケーションを行うための共通のツールであり、本質的な会話を行うためのコミュニケーション能力が備わってこそ、ビジネスの世界で「英語が出来る」と言えるんだ、と実感しました。

 

そして、3回目の転機となりますが、2013年後半よりシンガポールに拠点を移し、現在は、欧米系の海底油田掘削機器製造大手に専門的な技術を使ったサービスを提供する中小企業にマネジメントとして参画しています。シンガポールは東南アジアにおける石油・ガス産業の中心となる役割を果たしており、石油・ガス開発専用の造船・掘削設備関連企業が多く進出しています。2015年に独立50周年を迎えるシンガポールですが、税制面の優遇措置による外資の誘致に注力した結果、今では多くの外資系企業が域内のマネジメント機能を備えた地域統括会社を設置するようになり、短期間で急成長を成し遂げた国家です。また、イギリスの植民地であった歴史の遺産である英語を重視した教育政策により、ビジネスにおいても英語が広く使われるようになったことが、グローバル国家となり得たもう一つの背景だと思います。
現在は、小規模ながらもマネジメントとして参画し、マレーシア、インドネシアの隣国を含めた域内にて、新会社設立や訴訟対応、ガバナンスの強化、グループ全体の効率化など様々な取組を行っています。顧客に加え、現地の弁護士・会計士など様々な専門職の方々と仕事をする機会があり、チャレンジングですがやりがいのある環境で仕事をする事が出来ています。これまでのキャリアの中心であったIT分野から離れ、全く異なる分野に挑戦出来たのは、やはり最低限の英語力が不可欠だったように思います。また、前職までは、どちらかと言えば特定の分野の知識・スキルが求められるスペシャリストを目指していましたが、現職では様々な分野で幅広い仕事に対応できるジェネラリストであることを求められます。社内外問わず様々な分野の方々の知見を活用する必要がありますが、そのためには高いコミュニケーション能力が求められ、英語はそのコミュニケーションを行うための重要なツールになります。そして、単に英語を「聞く・話す・読む・書く」だけではなく、「コミュニケーション能力」を含めた意味での英語力があれば、活躍の場がどんどん広がるのではと感じます。そのためには、国籍問わず、様々なバックグラウンド・分野の方々と積極的にコミュニケーションをとる経験を積むことが大切だと思います。今後、より多くの日本人が、国境を越えて様々な国で活躍する姿を見る事を楽しみにしています。